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第15話 消えた帳簿、残った道

last update publish date: 2026-08-21 10:29:28

翌朝、辺境の空は重かった。

 雪解けの湿りを抱いた灰色の雲が低く垂れ込み、砦の石壁まで鈍い色に染めている。春へ向かう季節のはずなのに、北方の天気はまだ油断を許さない。晴れたと思えば凍り、凍ったと思えば崩れる。その気まぐれさが、この地そのもののようでもあった。

 レティシア・エーヴェルシュタインは、まだ日が十分に上がる前から帳面を開いていた。

 昨日鉱山で見つけた裏搬出控え。

 北側旧山道への流れ。

 帳場の使用痕。

 逃げた見張りらしき二人。

 どれも一つひとつは断片だ。

 だが断片のままでも、向かうべき方向だけははっきりしている。

 この領地は、ただ貧しいのではない。

 奪われているのだ。

 しかも、奪う側が領地の衰退そのものを隠れ蓑にして。

「お嬢様」

 マルタが茶を置きながら、珍しく少し険しい声を出した。

「今朝、倉庫の番の者が申しまして」<
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